海外の古典文学を厳選!読みやすくて面白い名作10選

書評

世界古典文学、と言われて何をイメージしますか?

堅苦しい、とか、読みにくい、分かり辛い、などのマイナスな感情を抱く方が多いかもしれません。

確かにそれは正しいです。

古典文学と言われる多くの作品(『罪と罰』だとか、『狭き門』だとか)は日本語訳でも非常に内容を把握するのが難しく、当時の風習やキリストの世界観に通じていないと読みにくい場面が多く見受けられます。

特に、『狭き門』などは、神を讃える2人の男女が、神への想いを間に挟んで恋愛をする、というストーリーです。聖書の言い回しに通じていないと、「そのシーンに神の描写いる?!」「なんで神のせいで別れようとしてるの?!」などの意味不明な描写に、早々に読む気を無くしてしまうでしょう。

しかし、古典文学は読みにくいものばかりではないのです。

聖書の出現場面が少なく、予備知識があまり必要ない高名な作品も、たくさん出版されています。また、単調な(現代人からしたらつまらなく思えることが多い)描写を避け、起承転結がはっきりした作品も多く存在します。

今回はその中でも短めで、特に読みやすい作品を10選あげたので、古典文学を通じて教養を身につけたい方はぜひ最後までご覧になってくださいね。

この記事が役に立つ人

  • 古典文学に興味があるが、どこから始めていいかわからない方
  • 文学の教養を身につけたい方
  • 小難しい古典作品で、挫折したことがある人

おすすめの作品10選

さて、ここからは10個の作品を挙げると同時に、ネタバレまではいかないまでもあらすじを解説しています。あらすじを知らずに読んで楽しみたい!という方は、この文の直後の10個のまとめのみご覧になってくださいね。

①『知と愛』 ヘルマン・ヘッセ著

②『黒猫』 エドガー・アラン・ポー著

③『変身』 フランツ・カフカ著

④『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ著

⑤『緋文字』 ナサニエル・ホーソーン著

⑥『汚れた手』 ポール・サルトル著

⑦『イワン・イリイチの死』 レフ・トルストイ著

⑧『若きウェルテルの悩み』 ゲーテ著

⑨『アルンハイムの地所』 エドガー・アラン・ポー著

⑩『ハンス・プファールの無類の冒険』 エドガー・アラン・ポー著

各作品の見どころを紹介

では、それぞれのあらすじとお薦めポイントについて詳しく説明していきます。

①『知と愛』 ヘルマン・ヘッセ著

『知と愛』は、賢く美しい2人の少年、ナルチスとゴルトムントが親交を深めるも、それぞれの魂に刻まれた欲が正反対だったせいで道を違え、やがて再会するまでの様子をことつぶさに描いた作品となっています。

ナルチスは賢く、神の声とその意志を探究することに熱意を燃やしていました。一方のゴルトムントは、機転は効くものの無類の女性好き。ジプシーの女性と出会ったのをきっかけとし、ナルチスと一緒に過ごした修道院から離れ、さまざまな女性を追って放浪の旅に出ます。

ゴルトムントの飽くなき執念のさまと青春期の葛藤が読んでいて大変面白い作品です。テンポも良いほうなので読みやすいですよ。

  • 読みやすさ ★★★☆☆
  • 短さ ★★☆☆☆
  • 描写の美しさ ★★★★☆
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②『黒猫』 エドガー・アラン・ポー著

エドガー・アラン・ポーは、多くの人が名前を聞いたことがある作者さんかもしれません。

推理作家の始祖とも言える存在で、江戸川乱歩さんの名前の由来となったのが有名ですよね。

そんなエドガー・アラン・ポーさんの作品でいっとう有名なのが、こちらの『黒猫』。酒乱の主人が猫をいじめる話なのですが、ストーリーが途中からまさかの展開に…!ハラハラドキドキで目が離せません。時間がなく、面白い古典小説を読みたい方にぴったりでしょう。

  • 読みやすさ ★★★★★
  • 短さ ★★★★☆
  • 描写の美しさ ★★☆☆☆

③『変身』 フランツ・カフカ著

これなしには古典文学を語れない、高名でかつ読みやすい作品です。

ある朝、目覚めたら醜い毒虫になっていた主人公のグレゴール・ザムザ。ザムザは今まで勤勉に働いて家族を養ってきた小市民でした。特に、妹のために嫌な仕事にも耐えていて、妹の幸せな結婚を願ってやまなかったのです。

毒虫になったのをきっかけに、家族からは嫌われ、妹からは邪険に扱われます。悪口や罵声に塗れた毎日はどこまで続くのでしょうか?

「手のひら返し」という言葉がしっくりくる作品です。最後の1行、なんとも言えない気持ちにさせられますよ。

  • 読みやすさ ★★★☆☆
  • 短さ ★★☆☆☆
  • 描写の美しさ ★★★☆☆

④『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ著

言わずと知れた有名作品です。高校の読書感想文で読んでいる友人がいませんでしたか?

幼い時から親の都合で勉強を押し付けられてきた、主人公のハンス・ギーベンラートの一生を描いた作品です。村や教師や親の、自分勝手な理想を押し付けられ続けられたハンスは、なんとか神学校(当時の東大のようなもの)に受かります。鼻高々な親を尻目に、晴れて神学校に入学した彼ですが…

人生の生き方を考えさせられる作品です。学生さんに特にお薦めですよ。

  • 読みやすさ ★★☆☆☆
  • 短さ ★★☆☆☆
  • 描写の美しさ ★★★★☆

⑤『緋文字』 ナサニエル・ホーソーン著

色々な意味で大人向けの作品です。人生長いしそんなこともあるよね、という言葉がしっくりきます。

舞台は17世紀のニューイングランド(アメリカ)。夫ではない男性の子供を産んでしまった主人公のヘスター・プリンは、町中から迫害にあい、白い目で見られます。犯人探しが行われるのですが、意外なところに…

まだ女性の権利がなかった時の話で差別がナチュラルに描かれますから、気分を害される方は閲覧を控えたほうが無難かもしれません。

  • 読みやすさ ★★☆☆☆
  • 短さ ★★☆☆☆
  • 描写の美しさ ★★★☆☆

⑥『汚れた手』 ポール・サルトル著

少し上級者向けです。「戯曲」というジャンルの古典になります。作品自体に文学性がある劇の台本、と言ったほうがわかりやすいかもしれません。

第二次世界大戦末期の架空の小国を舞台に、政治とは、権力とは、といったあるべき姿を逆説的に問いかける作品です。上映禁止になる国が出たほどの問題作ですが、読んでみると考えさせられることばかりですよ。

  • 読みやすさ ★★★★☆
  • 短さ ★★★★★
  • 描写の美しさ 性質上比較不可能

⑦『イワン・イリイチの死』 レフ・トルストイ著

死について扱った作品は数多いですが、『イワン・イリイチの死』のように、その穢らわしさについて真っ向から踏み込んだものは少ないと言えるでしょう。

主人公はもちろん、イワン・イリイチさん。権力欲と出世欲にまみれ、同じような妻を娶り、家族を省みることなく出世の道を探る日々でしたが、彼に告げられたのは辞令ではなく余命宣告。

余命宣告からの怒涛の展開に加え、文章にそこはかとなく漂う灰色の空気。死の虚しさ、人生とはなんのために生きるべきなのか、を考えさせてくれる作品です。

  • 読みやすさ ★★★★☆
  • 短さ ★★★☆☆
  • 描写の美しさ ★★☆☆☆

⑧『若きウェルテルの悩み』 ゲーテ著

古典随一の青春小説といえばこれ!!主人公ウェルテルは、婚約者のいる女性であるシャルロッテに恋をし、心を奪われてしまいます。

しかし相手は婚約済み、立派な職を持って愛情深い婚約者を目の当たりにし、苦悩したウェルテルが取る道は…?

古今東西、恋に溺れた若者の熱というのは素晴らしいものですね。一途な思いだけで人生は変わります。それを体現しているかのような物語です。

  • 読みやすさ ★★★☆☆
  • 短さ ★★☆☆☆
  • 描写の美しさ ★★★☆☆

⑨『アルンハイムの地所』 エドガー・アラン・ポー著

エドガー・アラン・ポーさん2作目。彼は短編を多く書いている上、起承転結がはっきりしているため非常に読みやすいんです。

『アルンハイムの地所』は、莫大な財産に恵まれた男が建てた「理想の家」の物語、というより描写です。アルンハイムと呼ばれる、まさに理想の家を1から解説してくれます。

それだけだとつまらないと思うかもしれませんが、この小説の1番の特徴はその描写の美しさです。臨場感たっぷりに描きだされる地所の風景は、まるで私たちが実際に旅しているかのような感覚にさせてくれます。

家好き、風景好きにはたまらないと思いますよ。

  • 読みやすさ ★★★★★
  • 短さ ★★★★☆
  • 描写の美しさ ★★★★★

⑩『ハンス・プファールの無類の冒険』 エドガー・アラン・ポー著

エドガー・アラン・ポーさん3作目です。

前2作とは違って、こちらはとってもSFチックな雰囲気が全面に押し出されています。

描写も美しく、さすが世界推理小説の草分けとなった作家さんだと言えるでしょう。SF好きさんにはたまらない作品だと思いますよ。

  • 読みやすさ ★★★★☆
  • 短さ ★★★☆☆
  • 描写の美しさ ★★★★☆

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